【コラム】気になる使用済みカジノ用トランプの行方〜マカオIR運営MGMが完全現地リサイクル&再生を実現〜(WEB版)/勝部悠人
マカオに拠点を置く筆者がラスベガスを旅行した際、世界に名だたる両カジノ都市の類似点や相違点を比較しながら街を巡るのが楽しかった思い出がある。1つのエピソードだが、ラスベガスではカジノで使用済みのトランプ(カジノ用プレイングカードを指す、以下同)が土産物として売られているのには驚いた。さまざまなカジノのロゴが入ったものがあり(カジノへ逆流することはないよう不正使用防止加工がなされていた)、記念に購入した。一方、これはマカオで全く見たことがなく、カジノ関係者に聞いたところ、使用済みのトランプが再びトランプとして世に出ることはないそうだ。では、一体どこへ行くのだろうか?
マカオのカジノ売上は世界一であり、その大半がトランプを使うバカラで占めている。使用されるトランプの量も膨大なものになると容易に想像できる。
最近、マカオにおける使用済みトランプの行き先について、興味深いニュースが飛び込んできた。ラスベガス系の事業者で、マカオでMGMマカオとMGMコタイの2つの統合型リゾート(IR)を運営するMGMチャイナホールディングス社が3月24日に会見を開き、使用済みトランプのリサイクルと再生の全工程ローカライズを実現するプログラム「Innovation and Technology Empowerment — MGM’s Localize Playing Cards Recycling and Upcycling Program」の正式ローンチを発表した。
同社によれば、同社が現地のテック企業である光聯世紀科技(Fnetlink Technology)社とタッグを組んで推進するプログラムで、2023年に両社が共同開発した世界初の「スマートプレイングカードシュレッディングソリューション」をベースとし、最新の全自動スマートシュレッディングシステムを用いて使用済みプレイングカード細断した後、革新的な「乾式繊維再生技術」を活用することで、従来のリサイクル工程では不可欠だった「水」を一切使用せずに高品質な再生繊維へ転換できるという。この再生繊維は、テイクアウトドリンクを紙袋に入れる際に底に敷く包装材や板材など、さまざまな環境に優しい資材に加工することができ、廃棄物の資源化・再利用を推進するとともに、環境配慮型素材への応用や関連産業の発展の可能性を広げることが期待されているとのこと。
また、このプログラムが全面的に実施されると、同社は年間約3千トンにも上る使用済みトランプをリサイクルし、100%の回収・再生率を達成できる見込みで、従来の方法と比較して固形廃棄物の量を大幅に削減するだけでなく、現地(マカオ)での処理と資源化・再利用を通じ、地域を跨ぐ廃棄物の輸送に伴う二酸化炭素排出(カーボンフットプリント)の効果的な低減にもつながるとした。
さらに、同社では、このプロジェクトは環境保護の取り組みという側面のほか、地元の研究開発(R&D)成果を実際の産業ソリューションへと昇華させた好例との見方を示し、マカオ政府が目標として掲げる経済の適度な多元化にも寄与するものであることも注目点として挙げた。
MGMチャイナホールディングス社CEO兼エグゼクティブダイレクターのケネス・フェン氏は本プログラムのローンチ会見の中で、今後もマカオのIR企業としての先導的役割を果たし、社会各界と連携しながら、マカオのグリーントランスフォーメーション及び質の高い発展に継続して貢献していくと述べた。
筆者は本件の取材のため、全自動スマートシュレッディングシステムの稼働状況の一端を参観すべく、MGMコタイのバックヤードエリアに立ち入ることを許された。長くマカオで取材活動をしているが、カジノの裏側を実際に見るのは初めての経験だ。厳重なセキュリティを何度も通り、マスゲーミングフロアの真下あたりに位置するプレイングカードのリサイクルルームに到達。小さな工場のようで、個別パックされた使用済みトランプが収納されたラック、複数のロボットアーム、ベルトコンベア、裁断機で構成されるマシンが置かれていた。ロボットアームがラックの中からトランプ入りのパックを掴んでベルトコンベアの上に移動させ、器用に開封。トランプのみがベルトコンベアで裁断機に運ばれ、ビニールの袋はゴミ箱へ入る。裁断後のトランプは、よく事務所で見かけるような細断された紙片となり、別の場所にある繊維化工程場所に運ばれるとのことだった。
マカオの他のIR運営企業がどのような取り組みを行っているのかについても、別の機会に取材してみたい。
MGMコタイのバックヤードで稼働する「スマートプレイングカードシュレッディングソリューション」のマシン=2026年3月、筆者撮影
■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/
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