出ている店はどう可視化すべきか
北関東のあるホールに、高齢の常連客から「玉積みを復活してほしい」要望が寄せられた。理由は実に明快で、「この店が本当に出しているのかどうかが分からないから」というものだった。
昭和の時代、出ている台を見極める方法として、各台に置かれた灰皿まで観察した。同じ銘柄のタバコの吸い殻が山のように溜まっていれば、「この台は出ている。だから客が粘っている」と判断する。一種のアナログデータ分析だが、当時はそれが十分に機能していた。
店長はその高齢客に対し、「ナンバーランプのデータを見れば、回転数も大当たり回数も分かります」と説明した。しかし、高齢者にとって、スランプグラフの読み方を覚えるのが面倒なのだ。玉積みなら、知識も説明も要らない。視界に飛び込んでくる情報だけで、「今日は出ている」「この店は渋い」が直感的に分かる。高齢者が求めているのは、利便性ではなく“分かりやすさ”だった。
しかし、業界全体の流れは真逆に進んでいる。各台計数機が当たり前になり、スマート遊技機では玉やメダルそのものが外に出てこない。完全スマート化が実現すれば、玉積みは完全に過去の遺物となる。そもそも、玉を積む“モノ”自体が存在しないのだ。
加えて現実的な問題もある。玉積みに戻せば、箱交換のために従業員を増やさなければならない。人手不足が深刻な中で、そこにコストを割く余裕はない。さらに、玉積みを求める高齢客が、あと何年ホールに通ってくれるかも分からない。一部の声を業態全体で受け止めるのは、あまりにもリスクが大きい。
そこで店長が導き出した一つの答えが、「ペイ率の公表」だった。ホールコンのデータを、加工せずに公開する。特別な設備投資もいらず、技術的なハードルも高くない。これが実現すれば、「どの店が出しているのか」は一目瞭然になる。
もちろん、出玉に自信のあるホールは賛同するだろう。しかし、そうでないホールは真実の数字など見せたくないし、公表もしたくないはずだ。アナログの原点に立ち返れば玉積みだが、それは時代の流れに逆行する選択でもある。
では、ここでの最適解は、「玉積みの視覚的分かりやすさ」と「スマート化の効率性」を両立させることだ。
玉積みか、スマート化か、という二者択一に答えはない。
高齢客が求めている本質は「玉を積みたい」ことではなく、この店は出しているのかどうかを一瞬で判断できる指標である。若い世代が当たり前に使えるデータランプやアプリは、彼らにとっては高いハードルだ。つまり問題は設備ではなく「情報の翻訳」にある。
玉積みは過去の文化だが、「出ている感」を演出する思想は今も必要だ。だから設備機器メーカーからそれに類する商品は販売されている。
スマート化を止めず、しかし客を置き去りにしない――その“中道”にこそ、ホールが生き残る道がある。
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🔗 元記事を読む(パチンコ日報)