値上げの教訓を学ばない父と、現実に直面する息子
かつて18店舗を展開していたパチンコチェーンは、いまや2店舗にまで縮小した。業界の将来性に見切りをつけたのか、オーナーは息子に事業を継がせることはしなかった。その息子が選んだのが「カレーハウスCoCo壱番屋」だった。
ココイチには、社員として経験を積めば独立オーナーを目指せる「のれん分け制度」があるのが選んだ理由。ロイヤリティ無料、自己資金ゼロでも起業可能というのも魅力的な仕組みだ。
数年の修業を経て、息子は独立を果たす。開業資金は親の支援もあり、順風満帆なスタートを切った。
しかし、現実は甘くなかった。2024年8月の最大10.5%の値上げ以降、客足は鈍化し、既存店の来客数は5カ月連続で前年割れとなった。かつて「安くて美味しい」と人気だったココイチも、今やトッピング次第では軽く2000円に届く。「もはや高級食ではないか」という声が出るのも無理はない。
問題は、値上げそのものではない。物価高の中で価格転嫁は避けられない。ただし、消費者の財布事情が追いついていないことが本質だ。賃上げの恩恵を受けているのは一部の大企業に限られ、多くの中小企業勤務者の可処分所得は伸び悩んでいる。このギャップが、そのまま客離れとなって表れている。
一方で、父であるホールオーナーの発想は対照的だ。
「アメリカではトラックの運転手でも年収が1500万円ある。その分物価も高いが。日本でも物価が上がっているのだから、パチンコの貸し玉料も4円ではやっていけない。倍ぐらいの8円にしなければ成り立たない」とボヤく。
しかし、現実には4円コーナーは全国的に過疎っている。そんな状況で玉単価だけを引き上げれば、さらに客離れを加速させるのは小学生でも分かること。
息子のココイチは、値上げによる客離れという現実に直面している。その姿を間近で見ていながら、父は同じ過ちを繰り返そうとしている。価格を上げれば売上が維持できるという発想は、国民の給料が上がり、需要が安定していることが前提だ。しかし、パチンコも外食も、いまや「選ばれる消費」である。
18店舗から2店舗へと縮小した背景には、こうした市場感覚のズレがあったのではないか。価格を上げる前にやるべきことは、お客さんが「その価格でも利用したい」と思える価値を提供することだ。
息子は市場の現実に揉まれながら、その厳しさを学んでいる。一方の父は、過去の成功体験から抜け出せない。皮肉なことに、衰退する業界の縮図が、この親子の対比に凝縮されているのである。
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🔗 元記事を読む(パチンコ日報)