【コラム】マカオのバカラでサイドベットオプションが豊富に〜技術革新が創出した新たな収益モデル〜(WEB版)/勝部悠人
アフターコロナとなって4年目を迎え、マカオのカジノ市場はコロナ禍の低迷を完全に振り払い、直近のカジノ売上(GGR)はコロナ前2019年の9割近くまで回復を遂げている。かつてはジャンケットと呼ばれる仲介業者がハイローラー(VIP客)を誘致し、閉鎖的なVIPルーム内で巨額の資金が動くモデルが屋台骨だったが、現在はよりライトな一般観光客を主とする「マスマーケット」が売上の7割超を支える構造へと転換しており、新たなトレンドとして定着。この構造変化に伴い、マカオのカジノで最もメジャーな「バカラ」ゲームそのものの性質も大きな変貌を遂げている。そのキーワードとして、最新技術を駆使した「スマートゲーミングテーブル」と、それに付随する「サイドベットオプション」の急速な拡大が挙げられる。
まず、バカラの基本とサイドベットの定義を整理しておきたい。ごく簡単に言うなら、配られたカードの合計の下一桁が「9」に近い方を予想し、「バンカー(親)」か「プレイヤー(子)」のどちらが勝つかに賭ける究極の二択ゲームだ。シンプルゆえの奥深さが魅力とされるが、最近のマカオでは、このメインの勝負とは別に、特定の条件が成立することに賭ける「サイドベット」が俄然注目を集めている。サイドベットのオプションとして、最初に配られた2枚が同数であることに賭ける「ペア」、引き分けを予想する「タイ」といった従来からあったもののほか、近年はバンカー/プレーヤーが特定の数字や条件で勝利することに賭ける「ラッキー6/ラッキー7」シリーズのような目新しいものが相次いで登場している。
なぜ今、これらのサイドベットが注目されているのか。その背景には、マカオのカジノオペレーターがこぞって導入を進めている「スマートゲーミングテーブル」というハードウェアの進化がある。スマートゲーミングテーブルとは、キャプチャ用カメラ、RFID(無線周波数識別)を内蔵したチップ、そしてテーブルに埋め込まれた高精度センサーを統合し、AIソフトによるデータ分析を行うシステムだ。かつて、配当が数十倍にもなる複雑なサイドベットは、ディーラーの目視と手計算に頼らざるを得ず、支払いミスというヒューマンエラーのリスクが極めて高かった。また、確認作業のためにゲームの進行スピードが落ちることは、カジノ側にとって機会損失を意味していた。
しかし、スマートテーブルはこの問題を一掃した。AIソフトとRFID技術のハイブリット利用により、瞬時に当選したサイドベットの種類と正確な配当額をモニターに表示する。ディーラーはシステムが算出した金額を払い出すだけでよく、1ゲームあたりの所要時間を短縮しながら、ミスのない正確な運営を可能とし、サイドベットオプションが拡大する契機となった。
これにより、プレイヤーの行動様式も明らかに変わったとされる。以前のハイローラーは、勝率という純粋な期待値にのみこだわる傾向があった。しかし、現在のメイン層である「プレミアムマス(富裕層寄り一般客)」は、例えばメインの勝負に1千香港ドルを賭ける際、同時に数百ドルのチップをサイドベットに散らすようになっている。プレイヤー心理として、メインの勝負に負けてもサイドベットが当たればトータルでプラス、あるいは軽微な損失で済むというリスクヘッジの側面と、1回の配当で数時間分の負けを一気に挽回できる可能性を秘めた興奮という二つの側面を持っていると想像できる。
カジノ経営の観点から見ても、サイドベットオプションの拡大は極めて合理的な戦略とされる。カジノ側の実質的な取り分を指す「ハウスエッジ(控除率)」という指標があるが、伝統的なバカラのメインベットの控除率は非常に低く設計されている一方、サイドベットの控除率はそれよりも高く設定されるのが一般的だ。スマートゲーミングテーブルの導入とサイドベットの多様化により、マカオのマスマーケットにおける控除率は、以前よりも数ポイント底上げされているという分析がある。
伝統的なカジノゲームであるバカラが技術の進化によりアップデートを遂げたことで、客とカジノ経営側の双方にとってメリットを生み出し、市場の活性化につながっている現状は非常に興味深い。サイドベットオプションの拡大により、マカオのバカラテーブルのデザインも以前とは大きく異なっており、ぜひマカオを訪れた際に見ていただきたい。
統合型リゾート(IR)施設が集積するマカオ・コタイ地区の夜景=2026年3月筆者撮影
■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/
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