交通費を浮かすためにヒッチハイクするホールオーナーの娘

都内に住むAさん(62)は、ゴールデンウィークを利用して、奥さんの実家がある静岡県へ帰省していた。富士芝桜まつりの鮮やかな景色を眺め、静岡おでんや金目鯛の煮付けといった地元の味を堪能し、久々の休暇を満喫した。

帰京のため高速道路へ向かっていた時だった。インターチェンジ入口付近で、段ボールに「東京方面」と書いた女性が立っていた。いわゆるヒッチハイカーである。しかも若い女性が一人。Aさんは迷った末、クルマを止めて声を掛けた。人生初のヒッチハイカーを乗せる体験だった。

女性はB子さん、30代前半。車内に乗り込むと、慣れた様子で会話を始めた。聞けば、静岡市内に住んでおり、東京へ行く際にはよくヒッチハイクを利用するという。理由は単純明快で、高速バス代3000円余りを節約するためだ。

「インターの入口が一番つかまりやすいんです」

そう笑うB子さんは、どの場所なら高速利用のクルマを捕まえやすいかも熟知していた。見た目も愛嬌があり、ドライバーに警戒感を与えにくい。さらにトラックに乗せてもらう際は、「必ず社名入りの車両だけを選ぶ」という。経験則から身を守る術も身につけていた。

話は自然と身の上話へ移った。

20代の頃はダンサーとして活動し、東京ディズニーランドやサンリオピューロランドでも踊っていたという。華やかな経歴だ。しかし現在は特定の仕事には就いていない。

そして、ここから話は思わぬ方向へ進む。

「実家、パチンコ屋なんです」

創業者は祖父。昔はおカネが数え切れないほど儲かったという。現在は父親が経営を引き継いでいるが、「今は全然儲からない」が口癖になっているそうだ。

B子さんは一人娘。しかし、ホール経営を継ぐ気はない。実家はホール以外にも飲食店や不動産業を営んでおり、将来的にはそちらを引き継ぐことになるらしい。

興味深いのは、ホールオーナーの娘でありながら、親から経済的援助を受けていない点だ。だからこそ、交通費を浮かせるためにヒッチハイクをする。しかし本人は「いろんな人と出会えるのが楽しい」と笑う。節約だけではなく、人との偶然の出会いそのものが魅力になっているようだった。

東京・三軒茶屋で車を降りる際、B子さんは深々と頭を下げた。その姿がAさんの印象に強く残った。

もし、今もパチンコ業界がかつてのように隆盛を誇っていたなら――。

彼女はダンサーの道を歩まず、ヒッチハイクを楽しむこともなく、自然な流れでホール経営を継いでいたのかもしれない。

だが現実は違う。

“継ぎたい商売”ではなくなった時点で、業界の未来は静かに変わり始めている。

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🔗 元記事を読む(パチンコ日報)